景福宮完全ガイド2025:ソウル必見の王宮観光(チケット・時間・アクセス)
1395年、朝鮮王朝の開国君主・太祖李成桂は、漢陽(ソウルの旧称)の北部に壮大な宮殿を建てました。景福宮(キョンボックン)、その名は「天の恵みを受け、大いなる福を得る宮」という意味です。ここは単なる王の住まいではありませんでした。500年にわたる朝鮮王朝の政治・文化の中心地であり、ハングル文字が創製された歴史的な場所なのです。
壬辰倭乱(文禄・慶長の役)で焼失し、日本統治時代には組織的に破壊されましたが、現代の景福宮は見事に復活しました。北岳山を背景に、330棟の建物、41万平方メートルに及ぶ宮殿群は、韓国で最も重要な文化遺産として訪れる人々を魅了しています。光化門をくぐれば、630年の歴史の旅が始まります。
景福宮の歴史:栄光から廃墟、そして復元へ
創建:1395年
太祖4年(1395年)、新王朝が漢陽に都を定めた後、正宮として建てられたのが景福宮です。朝鮮五大宮殿の中で最も規模が大きく、格式の高い宮殿でした。宮殿の名前は『詩経』の「すでに酒に酔い、すでに徳に満ち、君子万年、汝の大いなる福を助けん」から取られています。
鄭道伝が設計した景福宮は、風水地理上の名地である白岳山(北岳山)の麓に位置しています。南には漢江が流れ、東には駱山、西には仁王山が囲む「背山臨水」の完璧な立地でした。
壬辰倭乱と273年の廃墟:1592-1867年
1592年に日本軍が朝鮮に侵攻すると、宣祖は宮殿を捨てて義州へ避難しました。王に見捨てられたと感じた民衆が宮殿に火を放ち、景福宮は全焼。その後273年間、廃墟のまま放置され、朝鮮の王たちは昌徳宮と昌慶宮を主な住居としました。
再建:1867年
高宗4年(1867年)、その父・興宣大院君は王権強化と朝鮮の威信回復のため、景福宮の再建を決行します。7年の歳月をかけて330棟余り、5,792室の殿閣が復元されました。
しかし、この工事は莫大な費用がかかり、民衆に重い負担を強いることとなりました。
日帝による破壊と現代の復元
1910年の韓日併合後、日本は景福宮を意図的に破壊しました。1915年、朝鮮物産共進会のために勤政殿の前に朝鮮総督府の建物を建て、宮殿建物の90%以上を撤去したのです。
1990年代から始まった復元事業により、1996年に総督府の建物が撤去され、光化門、興礼門、建清宮、泰元殿などが原型通りに復元されました。復元作業は現在も続いています。
景福宮の建築美
宮殿配置の原則
景福宮は厳格な儒教の秩序と風水地理を基に設計されています。南の光化門から北の寝殿まで、主要な殿閣が一直線上に配置され、左右対称を成して位階を表現しています。
外殿(政治と儀礼の空間):
- 光化門 → 興礼門 → 勤政門 → 勤政殿 → 思政殿
内殿(王と王妃の生活空間):
- 康寧殿(王)、交泰殿(王妃)、慈慶殿(大妃)
後苑(休息と宴会の空間):
- 慶会楼、香遠亭、峨眉山
勤政殿:朝鮮の心臓部
景福宮の正殿である勤政殿は「勤勉に政務を行う」という意味を込めています。二層の月台の上に建てられた勤政殿は、高さ24.4メートルに達し、内部の天井には2匹の黄龍が如意珠を争う姿が描かれています。
王の即位式、外国使節の接見、科挙試験の合格発表など、国家の重要な儀礼がここで執り行われました。正面5間、側面5間の重層八作屋根の建物で、朝鮮時代木造建築の最高傑作と評価されています。
慶会楼:水上の宴会楼閣
慶会楼は「慶びの集いの楼閣」という意味で、池の上に建てられた2階建ての楼閣です。48本の石柱が支えており、1階は開放され2階のみ床がある独特な構造です。
王が外国使節を接待したり、科挙合格者のための祝賀宴を開いたりする際に使われました。池には3つの人工島があり、これは仙人が住むという三神山(蓬莱・方丈・瀛洲)を象徴しています。
丹青と屋根の秘密
景福宮の殿閣に施された丹青(タンチョン)は単なる装飾ではありません。青(青)、赤(赤)、黄(黄)、白(白)、黒(黒)の五方色は陰陽五行思想を込めており、木材を保護する実用的な機能もあります。
瓦屋根の軒先は緩やかな曲線を描いて空へ伸びています。これは美しさだけでなく、雨水を効果的に排水し、日光調節を助ける科学的な設計です。
景福宮観覧情報(2025年)
開館時間と入場料
観覧時間(季節により異なります):
- 1月
2月: 09:0017:00(入場締切16:00) - 3月
5月: 09:0018:00(入場締切17:00) - 6月
8月: 09:0018:30(入場締切17:30) - 9月
10月: 09:0018:00(入場締切17:00) - 11月
12月: 09:0017:00(入場締切16:00)
休宮日: 毎週火曜日(火曜日が祝日の場合は開館)
入場料:
- 大人(19~64歳): 3,000ウォン(約300円)
- 青少年(7~18歳): 1,500ウォン(約150円)
- 児童(6歳以下)、高齢者(65歳以上): 無料
- 韓服着用時は無料入場(伝統韓服に限る)
統合観覧券: 10,000ウォン(4大宮+宗廟、3ヶ月間有効)
- 景福宮、昌徳宮、昌慶宮、徳寿宮、宗廟
守門将交代儀式:必見のハイライト
景福宮を訪れたら、守門将交代儀式は絶対に見逃せません。朝鮮時代の宮殿警備儀式を再現したこの行事は、華やかな服装と厳粛な手順で多くの観光客に愛されています。
時間: 毎日午前10時、午後2時(各20分) 場所: 光化門前広場 費用: 無料(景福宮の入場料は別途) 注意事項: 火曜日(休宮日)、酷暑・極寒期、雨天時は中止
守門将交代儀式は1469年(睿宗元年)に制定された『国朝五礼儀』に基づいて再現されています。80名余りの守門軍が伝統的な甲冑と武器で武装し、ラッパの音に合わせて定められた順序で儀式を執り行います。
良い場所で見るには、開始20~30分前に到着することをお勧めします。特に韓服を着ていくと、より素敵な写真が撮れますよ。
夜間特別観覧:星明かりの下の景福宮
景福宮は年2回(春・秋)夜間特別観覧を実施しています。照明に照らされた景福宮は、昼とは全く異なる神秘的な雰囲気を醸し出します。
2025年予定日程:
- 春の夜間開場: 4月~5月中(約2ヶ月)
- 秋の夜間開場: 8月~10月中(約3ヶ月)
予約: オンライン事前予約必須(インターパークチケット) 人数: 1回あたり制限人数制 時間: 19:00~21:30(入場時間制限あり)
夜間開場時は、慶会楼の池に映る月明かり、照明に輝く勤政殿、静かな後苑散策など特別な体験ができます。チケットはオープンと同時に速やかに売り切れるため、事前予約が必須です。
景福宮おすすめ観覧コース
おすすめコース1:必須2時間コース
時間が限られた方のための必見コースです。
- 光化門(10分) - 宮殿の正門、世宗大王と李舜臣将軍の銅像
- 興礼門(通過) - 二番目の門
- 勤政門・勤政殿(30分) - 朝鮮の正殿、玉座と天井の龍の絵
- 思政殿(15分) - 王の執務室
- 康寧殿・交泰殿(20分) - 王と王妃の寝殿
- 慶会楼(25分) - 池の上の楼閣、最高の撮影スポット
- 香遠亭(20分) - 池の中の六角亭
所要時間: 約2時間 難易度: 易しい おすすめ: 初訪問者、家族連れ
おすすめコース2:じっくり3~4時間コース
景福宮をしっかり感じたい方のための完全コースです。
- 光化門広場 - 世宗大王・李舜臣銅像
- 興礼門・勤政門 - 宮殿進入過程を体験
- 勤政殿 - 正殿の威厳、月台と彫刻像
- 思政殿・千秋殿・万春殿 - 王の業務空間
- 康寧殿・交泰殿・慈慶殿 - 王室生活空間
- 峨眉山 - 王妃の後苑、煙突と花階
- 慶会楼 - 48本の石柱の楼閣
- 香遠亭・香遠池 - 高宗の休息所
- 建清宮 - 高宗と明成皇后の住まい、乙未事変の現場
- 国立古宮博物館(選択) - 王室遺物展示
所要時間: 3~4時間 難易度: 普通 おすすめ: 歴史愛好家、写真好き、再訪問者
観覧のコツ
ベスト撮影スポット:
- 勤政殿正面(月台下から)
- 慶会楼池のほとり(殿閣が水面に映る角度)
- 香遠亭取香橋の上
- 慈慶殿峨眉山の煙突
- 建清宮庭園
季節別おすすめ:
- 春(3~5月): 慶会楼の桜、慈慶殿花階の春の花
- 夏(6~8月): 香遠池の蓮、涼しい慶会楼
- 秋(9~11月): 紅葉、澄んだ空と瓦屋根
- 冬(12~2月): 雪景色、静かな冬の宮殿
混雑度:
- 平日午前(09:00~11:00): ゆったり ★★★★★
- 平日午後(13:00~15:00): 普通 ★★★
- 週末・祝日: 混雑 ★
- 守門将交代儀式の時間帯: 非常に混雑
景福宮と一緒に楽しむ
韓服体験
景福宮周辺(三清洞、仁寺洞、北村)には韓服レンタル店が多くあります。韓服を着れば景福宮への無料入場はもちろん、伝統宮殿と調和した素敵な写真を残すことができます。
韓服レンタル料金: 15,000~30,000ウォン(4時間基準) おすすめ時間帯: 午前早めにレンタルして昼前までに撮影 注意事項: 週末と祝日は事前予約必須
国立古宮博物館
景福宮内部に位置する国立古宮博物館は、朝鮮王室の遺物と文化財を展示する空間です。王室の服飾、御宝、儀軌、科学器具など4万点余りの遺物を所蔵しています。
入場料: 無料
観覧時間: 10:0018:00(月曜日休館)
所要時間: 12時間
おすすめ: 景福宮観覧前後に訪問
周辺名所
景福宮訪問後、一緒に巡るのに良い周辺名所です。
徒歩10分以内:
- 国立民俗博物館(景福宮内)
- 青瓦台(事前予約必須)
- 三清洞通り(カフェ・ギャラリー)
- 西村(通仁市場、孝子洞)
- 仁寺洞(伝統工芸品、茶屋)
徒歩15~20分:
- 北村韓屋村
- 昌徳宮・昌慶宮
- 光化門広場
- 宗廟
景福宮訪問時に知っておくと良いこと
交通案内
地下鉄(最もおすすめ):
- 3号線景福宮駅5番出口(徒歩5分、光化門のすぐ前)
- 5号線光化門駅2番出口(徒歩10分)
バス:
- 幹線:109、171、172、272、601、606など
- 停留所:景福宮、光化門停留所で下車
駐車: 景福宮駐車場(有料、混雑時は満車の可能性)
- 基本2時間3,000ウォン、以降30分ごとに1,000ウォン
- 週末・祝日は公共交通の利用を強くおすすめ
観覧マナー
景福宮は600年の歴史を持つ文化遺産です。以下のマナーを守ってください。
- 殿閣内部への立ち入り禁止(ロープで遮断された所は進入不可)
- 殿閣の柱や壁に寄りかからない
- 月台(石段)に座らない
- ゴミの不法投棄禁止
- 大声で騒がない
- ドローン撮影禁止
- 食べ物の持ち込み可能だが殿閣近くで食べない
季節別の服装
- 春・秋: 日較差が大きいので軽い上着を準備
- 夏: 日よけ帽子、日焼け止め、涼しい服
- 冬: 暖かいコート、手袋、マフラー(屋外観覧中心)
靴: 歩きやすい運動靴必須(景福宮は非常に広く、約2~3km歩行)
ガイドツアー
無料解説プログラム:
- 韓国語: 毎日10:00、14:00(集合:興礼門内側)
- 英語・日本語・中国語: 毎日11:00、15:00
- 所要時間: 約1時間
- 申込: 現場先着順
オーディオガイド:
- 言語: 韓国語、英語、日本語、中国語、スペイン語
- レンタル料: 3,000ウォン
- レンタル場所: 興礼門内側観覧案内所
よくある質問(FAQ)
Q1. 景福宮の観覧にどれくらい時間がかかりますか?
簡単に見て回ると12時間、ゆっくり観覧すると34時間かかります。守門将交代儀式、国立古宮博物館まで含めると半日コースとして計画するのが良いでしょう。
Q2. 韓服は必ず借りないといけませんか?
必須ではありませんが、強くおすすめします。韓服を着ると無料入場(3,000ウォン節約)と共に、景福宮に調和した美しい写真を残すことができます。周辺にレンタル店が多いので当日レンタルも可能です。
Q3. 景福宮は他の宮殿とどう違いますか?
景福宮は朝鮮の正宮として最も大きく格式のある宮殿です。勤政殿の壮大さ、慶会楼の美しさ、全体的な規模が他の宮殿を圧倒します。初めてソウルの宮殿を訪問するなら景福宮をおすすめします。
Q4. 雨が降っても観覧できますか?
可能です。むしろ雨の中の景福宮は趣があります。ただし守門将交代儀式は雨天時中止され、滑りやすいので注意してください。
Q5. 子供連れでも大丈夫ですか?
とても良いです。広い広場で走り回れますし、国立民俗博物館には子供向け体験プログラムもあります。ただしベビーカーは一部区間で不便な場合があるので、抱っこひもをおすすめします。
Q6. 宮殿内にレストランやカフェはありますか?
宮殿内には飲食施設はありません。簡単な飲み物の自動販売機のみです。食事は周辺の三清洞や西村、仁寺洞で済ませてください。光化門前の地下にも食堂街があります。
Q7. 写真撮影は自由にできますか?
個人撮影は自由にできます。ただし商業用撮影、ウェディング撮影などは事前許可が必要です。ドローン撮影は禁止されています。
Q8. 夜間開場チケットはいつ予約しますか?
夜間開場日程発表後、インターパークチケットで予約可能です。通常開場の1~2週間前に予約が始まり、速やかに売り切れるのでアラート設定をしておくことをおすすめします。
おわりに:生きている歴史の現場
景福宮は単なる観光地ではありません。朝鮮王朝500年の栄光と受難、そして復活の歴史がそのまま息づいている場所です。光化門をくぐる瞬間から香遠亭を過ぎて出るまで、皆さんは時間を遡って朝鮮時代へ旅することになるでしょう。
勤政殿の前に立てば、王の即位式を見守る臣下になったようで、慶会楼の池のほとりに座れば、科挙合格の喜びを分かち合った書生の心が感じられます。建清宮の庭を歩けば、明成皇后の悲しい歴史が胸を打ちます。
景福宮を本当に楽しむ方法は、急がないことです。韓服を着てゆっくり歩き、殿閣の細部を観察し、石一つ一つに刻まれた物語を想像してみてください。そうして景福宮と対話を交わすうちに、歴史が教科書の中の過去ではなく、今この瞬間私たちと共にある現在だと気づくことでしょう。
ソウルを訪れたら、景福宮は必ず一度は立ち寄るべき必須コースです。630年前の朝鮮の建国者たちが夢見た新しい世界、その夢の痕跡に会いに来てください。




